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2026/09/13 18:02

日が長くなり、夕暮れが少しずつ遠のいていく季節。冷えた炭酸水をグラスに注ぐと、光が細かく砕けて、テーブルの上に小さな星座を描く。窓辺から差し込む夕陽が、その光をさらに濃くしていく。壜壥(タンテン)、鳥山高史さんのStencilレトログラスは、そんな何気ない夕暮れの一杯を、少しだけ特別なものに変える。
独立の当初から、美しすぎるクリスタルガラスには惹かれなかったという。求めていたのは「土っぽいガラス」。屋号に土偏の古い字を選んだのも、そのためだ。技法に選んだのは、宙吹きよりも制作が難しい型吹き。自ら金型を作り、不均等なものを均等に、美しく見せる造形を追い求める。効率よりも矛盾の多い方をあえて選び続ける姿勢が、この器の静かな説得力を支えている。
作品の中には、小さな手にもちょうど収まるようにと作られたグラスなど、暮らしの中の物語をそのまま宿したアイテムもある。
ひんやりとした感触と、掌に吸いつくような厚みのバランス。手のなかで確かめるほどに、似たような佇まいのグラスとはまるで違う存在感だとわかる。ひとつとして同じ形がないのは、型吹きが宿す小さな揺らぎのせいだ。
まだ小さかった手でそっと包み込んだグラスの、あの少し歪んだ縁や気泡の跡を、いつか大人になってからふと思い出す日が来るかもしれない。氷を落として炭酸水をなみなみと注げば、弾ける気泡の音までもが、何気ない夕食の卓を少し華やがせる。迷ったら、だまされたと思って一つ、使ってみてほしい。半年ほど手にした頃、きっとその真価に気づくはずだから。使うほどに、日々の一部として馴染んでいく器だ。
壜壥[TANTEN] 鳥山高史 プロフィール
1972年 生まれ
1992年 ヴェネツッア遊学 帰国後15年間ガラス関係の仕事に従事
2004年 壜壥[TANTEN]活動開始
2007年 兵庫県丹波市に築炉
2015年 海外取引開始
