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2026/09/13 17:48

記憶には殆ど残っていないけれど、私の父方の本家は田舎の機織り工場だったそうだ。ただ、その工場の近くで祖母が下宿を営んでいたことは、比較的よく覚えている。というのも、その下宿には大量の着物の端切れがあって、私は祖母からそれを少しわけてもらっては、せっせと人形の服を縫っていたからだ。もう一つ、記憶に残るのは、下宿裏の川で洗われる着物の生地たち。今となっては、それは滅多に目にすることのできない、なんとも素敵で風情がある光景。そうした出自が理由かどうかはわからないけれど、毎日大量の布に囲まれて仕事を続ける大の布好きとなった。

そんな布好きな私の娘も、お酒の飲める歳を迎え、深緑に蝶の柄があしらわれた振袖をまとった。小柄な私が着ていた時よりも、更に小さく切り詰められたその着物は、とある人形師の方がデザインしたものだそう。大人になりたての若者が集う場所では、「ちょっとシブすぎるんじゃないか」と夫は言うけれど、私のお気に入りだったその着物を、ウン十年の時を経て娘が引き継いでくれたのは、なんとも感慨深い。

今年の春、ある布に一目惚れした。Koriolis Textilesの手織りの布たちだ。迷うことなく、手に取ったのは、丁寧に織り込まれた、リネンのグーズアイ柄のショール。柄の一つひとつが信じられない程に繊細で、そこから溢れ出る作り手の想いが感じられる。

気が遠くなるほどの時間と手間がかけられているあろうことは言うまでもない。

作り手自らがインド藍で染め上げ、その糸で織り込まれた布もまた優しく美しい。自然素材と見事に調和したその色合いは、主張しすぎず、毎日の暮らしに溶け込むよう。日常の中で自然と育っていく、そんな布と言えるだろう。

時間をかけて染められ、織り込まれた布たち。その味わいと愛着は使い込む程に増していく。布好きでなくとも、自然と大切に使い続けたくなるというもの。こんな私はといえば、いつの日かグースアイ柄のショールを娘へと引き継ぎ、素敵なアンティークリネンへ育てることを企てている。

作家Profile / 田中 香

・東京生まれ、在住
・エスモードジャポン東京校卒業
・縫製の仕事をしながら織りを学ぶ。
・2017年Koriolis Textilesとして制作活動を開始。

使うたびに心を楽しませてくれる、使うほどもっと好きになる、をコンセプトに、自然素材を中心に愛着を持って長く使えるものを制作しています。シンプルなデザインに手織りならではの温かみと美しい色。

ほとんどの製品が自宅で手洗い等できますので、お手入れしていただきながら長くご愛用いただけます。

さまざまなことが交差して織りなす毎日の暮らしにコリオリテキスタイルの手織りの品を。